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1.時の中心としての現在時制
1.1.現在時制の基本的な用法
1.1.1.現在時制の時間表示

 現在時制とは現在の出来事を表すのに用いるのだが、その現在とは話し手が「今」と考えている時間帯の範囲であり、それは言い換えるならば、過去ではない全ての時間帯とも考えることができる。そこで現在時制とは、「過去」か「非過去」かという区別により表されることもある。そのような時間関係については後に現在時制の主な用法を踏まえて説明を加えていくことにするが、ここで現在時制を時間表示に示すと次のようになる。

(1)
 (*5)

*5  S、M、Eの3点については「はじめに」のところで述べているように、Reichenbach(1947, pp.287-298)のS、R、Eの3点による時間表示を参考にしている。この3点のうちRのpoint of referenceについては一般に基準時とされ、これは話し手が基準を置く時点とされている。しかし、本書においてはそれだけの解釈ではなく、より発展的に捉えて話し手の心境を表す時点のMとして置き換えている。これがどのような意味を持つかについては後に説明を加えていく。

 上の時間表示上で現在時のS、M、Eの3点は、Sがpoint of speechのことでこれは話し手が発話した時点を表し、通常は現在時に置かれる。Eはpoint of the eventのことで出来事が生じた時点を表している。しかし、Eが表すのはそれだけではない。Eについては「出来事」として表しているが、何らかの物が存在していること、または何らかの事実が存在していることなど全てを「出来事」と呼んで表している。そしてMとはpoint of mindのことで、話し手の「心の位置」を表している。心の位置とは話し手が発話の際に、焦点を置く位置である。たとえば上の時間表示のように現在時にある場合は話し手の焦点がその現在時にあることになるが、これは同時に話し手の心境が現在から離れていないことをも表している。それに対して、現在時から離れた場合、たとえば過去時に置かれるときは心境が現在から離れることになるので、現在との関係においては途切れることを表すことになる。このことは過去時制が持っている意味的特徴に通じることになるのだが、これを詳細に述べるには過去時制との比較が必要になるので後に説明を加えていくことにする。そこで、ここでは現在時にある心の位置は話し手の焦点が過去でも未来でもない、現在という時間帯におかれていることを表しているとだけ述べておくが、その心の位置とは「時を表す副詞表現」に応じる。(*6)

*6  Reichenbachでいうpoint of reference(R)も、基本的には時を表す副詞表現に応じる。しかし、本書で言う心の位置(M)は時を表す副詞にのみ応じない。ただし、ここではそこまでふれずに、後に説明を加える。

 S、Eの2点を区切っている「,」(コンマ)は、区切られた双方が同時にあることを意味している。(今後時間表示上においては簡略した記号として示していくが、本文においてはそれぞれを発話時(S)、心の位置(M)、出来事時(E)というように述べていくことにする。)これは発話時(S)のある現在時において、心の位置(M)が重なり、そして同時にそこに生じている出来事を、話し手が捉えていることを意味している。


時間的感覚01






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